「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

三つ目の物語

レジリエンス外来.71

首都圏のJR全線の利用者は、1週間でのべ1億人近いそうです。 と、いうことは、 この広告を1億人近い人が眼にすることになります。 本を買おうと買うまいと、 「がん専門の精神科医が存在する という情報を1億人が眼にする、 と、いうことになります。 「…

レジリエンス外来.70

「稲垣麻由美さんに書いてもらえて、ほんとうに幸福だった」 そのことを、みひろさんのPOPを見て、改めて思い知らされました。 何故なら、稲垣さんが記したのは「がん患者の闘病記」ではなく、「精神腫瘍医の症例記録」であるからです。 これは、著者が患者…

レジリエンス外来.69

みひろさんが清水先生に託した葉書を受け取ったのは、 清水先生の外来の時間でした。 みひろさんの葉書には 今年の7月に骨巨細胞腫が発現したこと。 読売新聞の記事で私のことを知ったこと。 清水先生から「人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医…

レジリエンス外来.68

「レジリエンスの力は誰にでもあります」 清水先生は、そう断言します。 それは、医学的にも証明できることなのでしょう。 ただ、 「レジリエンスの力を持っている」 ということと 「レジリエンスの力を使える」 ということは、違います。 力、エネルギーは…

レジリエンス外来.67

もちろん、人生に勝ち敗けはありません。 けれども、 「自分の身体は、けしてがんに勝つことは出来ない」 と知った時の敗北感は、 人を俯かせるには充分だと思います。 いや、膝を屈してしまいかねません。 かつての私のように。 幸いなことに、私は国立がん…

レジリエンス外来.66

扉が開く毎に、別の「物語」が飛び込んでくる。 こうまとめてみれば、レジリエンス外来の現場は美しいもののように思うことができるかもしれません。 しかし、その「物語」の多くの語り始めは、 「後悔」から始まることが多いのではないか。 そのように思わ…

レジリエンス外来.65

本が出版されてしばらくしてからのことです。 清水先生から私たち宛に「嬉しい報告メール」が届きました。 「人生でほんとうに大切なこと」の本を読んだ出版者の方から、「生きることについて考えるような本を出しましょう」というお手紙をいただきました」 …

レジリエンス外来.64

もしも私が「清水先生が座る席」に座ったとしたら。 つまり、患者ではなく、ドクターの席に座ったとしたら。 世界は、どんな風に見えるのだろうか? 私はそんなことを想像してみます。 扉が開く度に、別の患者が現れます。 つまり、扉が開く度に、別の物語が…

レジリエンス外来.63

未来は、明日から始まるものではありません。 未来は、今から始まるものです。 今を生きることが、未来を生きることなのです。 死ぬまでは、生きることができるのです。 別れの時が来るまでは、一緒にいることができるのです。 そのことを、金井師と清水先生…

レジリエンス外来.62

能楽師は能面を依代にして、死者の霊魂を憑依する。 そして、その死者の人生を能舞台の上で生き直す。 そうやって能楽師は死者との対話を繰り返す。 能楽師は、「あの世」と「この世」を行き来する。 清水先生のレジリエンス外来を受診した時に、そんな変な…