「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

レジリエンス外来.66

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扉が開く毎に、別の「物語」が飛び込んでくる。

こうまとめてみれば、レジリエンス外来の現場は美しいもののように思うことができるかもしれません。

しかし、その「物語」の多くの語り始めは、

「後悔」から始まることが多いのではないか。

そのように思われます。

そもそも、レジリエンス外来に来る患者の多くは、

「治らないがん患者」です。

あるいは、がんで未来を奪われた患者や家族、です。

そりゃそうです。

「治るがん」ならば、自分に希望が持てます。

なにしろ治るのですから、がんが身体から無くなった後の明日を描くことができます。

そんな患者や家族には、レジリエンス外来は無用です。

しかし、命はもちろんですが、 がんで身体の一部、あるいは身体の機能を失った場合でも、本人も家族も、予定していた未来を、がんに奪われてしまったことになります。

つまり、身体は、がんに負けたことになります。

がんになってしまった事実を変えることはできません。

そのがんに、未来を奪われる事実を変えることはできません。

誰にもできないのです。

けれども、精神腫瘍医にだけは、できることがあります。

精神腫瘍医は、身体ではがんに負けた患者を、心では勝たせることができるのです。

それはがん患者の大きな救いになります。

人は必ず死にます。

しかし、

敗北の中で死んでゆくことと、

勝利の中で死ぬことには、

天地ほどの違いがあります。

だからこそ、精神腫瘍医は、がん患者とその患者の最後の希望なのです。

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