「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル.7

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「手段が目的になる。というのは、よくあることです」

私は清水先生に笑います 

「私は人は「何者かになる為に生まれてきたのだ」と思うようになってしまいました。ヒーロー願望のようなものだと思います。まったく子供じみていますがね」 

清水先生は、無言で話をうながします。

「そんな私が、ここがんセンターで沢山のヒーローたちに出会ったんです。

さまざまなものを失いながらも「生きる」ということを選択したヒーローたち。

さらには近い将来の「死」を受け入れる覚悟を定めるヒーローたち」

「そんなヒーローは、特別な人、つまり「何者」ではありません。普通の、無名の人なのです」

「二人に一人が、がんになるのですからね。二人に一人がヒーローです」

「ところで私の「ヒーローの定義」ですが、それは「語り継がれること」です。つまり、「物語になる」ということ。

ですから、清水先生のレジリエンス外来は、まさに私が求めていたものでした」

「私は抗がん剤の新薬開発の治験者となったことで、「世の中の役に立つ」という希望が叶ったことになります。 そして、稲垣麻由美さんの「人生でほんとうに大切なこと」が出版されたことで、精神腫瘍医の存在が知られるようになれば、そのことでも世の中の役に立つことができます」

「千賀さんは、「精神腫瘍学の兄」とかには成れるかもしれません」

清水先生は私を笑わせます。

「それに、「人生でほんとうに大切なこと」の登場人物として「語り継がれる」ことにもなりました」

「はい。清水先生の「忘れられない患者」にも選んでいただきました」http://www.asmss.jp/2019/syuuasahi0301.pdf

私も応酬して清水先生を笑わせます。