コントレイル66
あめゆじゆ とてちて けんじや
けんじ兄ちゃん みぞれをとってきてちょうだい
宮沢賢治の「永訣の朝」の一節です。
宮沢賢治の妹(とし子)が死の床にいる。
けれども、賢治には妹に何もしてあげられない。
そんな賢治に、妹は「みぞれをとってきて」と頼みます。
妹は賢治に「妹のためにしてあげること」を作ったわけです。
妹には、賢治の辛さがわかっていたから。
妹は、兄の賢治に
「妹のために、最期に何かしてあげた」
という幸福を残してあげようとしたから。
もちろん、賢治は妹の優しい気持ちを全て理解していました。
だからこそ、「永訣の朝」という詩に残したのだと思います。
大切な人が居なくなることがわかったら、
何か望みをかなえてあげたいと思います。
その人が大切な人であれば、なおのこと。
もしも一年後、この世にいないとしたら。
自分がいなくなることもある。
あの人がいなくなることも、あります。
コロナ禍は、そんなことも考える機会になります。