「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル66

もしも一年後、この世にいないとしたら。

 

 あめゆじゆ とてちて けんじや

 

 けんじ兄ちゃん みぞれをとってきてちょうだい

 

宮沢賢治の「永訣の朝」の一節です。

 

宮沢賢治の妹(とし子)が死の床にいる。

けれども、賢治には妹に何もしてあげられない。

 

そんな賢治に、妹は「みぞれをとってきて」と頼みます。

 

妹は賢治に「妹のためにしてあげること」を作ったわけです。

 

妹には、賢治の辛さがわかっていたから。

妹は、兄の賢治に

「妹のために、最期に何かしてあげた」

という幸福を残してあげようとしたから。

 

もちろん、賢治は妹の優しい気持ちを全て理解していました。

だからこそ、「永訣の朝」という詩に残したのだと思います。

 

大切な人が居なくなることがわかったら、

何か望みをかなえてあげたいと思います。

その人が大切な人であれば、なおのこと。

 

もしも一年後、この世にいないとしたら。

 

自分がいなくなることもある。

あの人がいなくなることも、あります。

 

コロナ禍は、そんなことも考える機会になります。