「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル.88

星の王子さま―オリジナル版

「何者かになる、ということは、
 多くの人にとっての「特別な存在」になる、
 ということなのでしょう」

 私の説明を清水先生は納得してくれたようです。

「けれども「特別な存在」になることが、
 「何者かになる」ということならば、
 私には、何者かになる必要はありません」

 清水先生の顔に笑みが浮かびます。

「はは。そうです。
 私には、すでに沢山の「特別な存在」がいます。家族、友人、例えば清水先生」
 
 清水先生の顔が晴れます。

「そして、私はその人たちから「特別な存在」として扱ってもらっています」

「何者かになんかならなくても、特別な存在になることはできる。
 なにより幸せになることができる。
 そのことに気づいたのは、清水先生のおかげです」

「清水先生は、適応障がいで迷子になった私を、一緒に迷子になってくれました。
 清水先生のおかげでここまでたどり着きました」
 

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話