コントレイル.52
日本の独特な哲学・美学ともいえるものに「武士道」があります。
ところで、能楽、猿楽がこの武士道を形成する上で欠かせないものであったことは、あまり知られていません。
武士道は、武装農民であった者たちが、武士となるなかで培われた哲学です。 しかし、武士として戦闘することが禁じられた江戸時代に磨かれてました。 その結果、武士道は、およそ800年近く日本人の中に根付き、武士のみならず、日本人の美意識に強い影響力を持つことになります。
「戦闘しない」どころか「刀を抜かない」で、民の規範となることが武士には求められます。
まさに、「矛を止める」ための武士道は、日本の「藩国」単位に個別に進化します。
しかし、薩摩藩の武士道と会津藩の武士道に、大きな違いはありません。藩国の上には徳川幕府があったからです。封建制度であった江戸時代ですから、地方の文化も花開きましたが、なんといってもその中心には徳川幕府がありました。そして、徳川幕府が公式とした芸術芸能こそが猿楽、後の能楽でした。