コントレイル.51
私だけでなく、がんを告知された者は、死を恐怖します。
医学の進歩で「治る病気」になったとはいえ、がんという病気への恐怖心は簡単には払拭できないでしょう。
人は死の恐怖心と、どう対処すれば良いのか?
他の人は、どう対処したのか?
私は沢山の事例を知る清水先生から、その情報を得たいと思いました。
沢山の人が可能な対処ならば、私にも可能な対処かも知れない。
そう考えたからです。
しかし、清水先生の答えは
「答えられません」というものでした。
そして、清水先生の答えは「真実」でした。
何故なら、人の人生とはほんとうに「個別」なものだから、死の恐怖への対処もそれぞれだからです。
どんな人も死の恐怖と闘って、やがて受け入れて死んでいきます。
「どんな人にも手数は違っても、詰むことが決まっている詰将棋」と清水先生が「人生でほんとうに大切なこと」の中で語っている通りです。
その清水先生から「死生学」を学ぶことを示唆された私は私は、死の恐怖と戦うことではなく、受け入れることを選びます。
そして、日本人古来の「死生哲学」として、「お能の死生観」を学ぶことにします。
その日本人古来の死生観、日本人独特な死生観を学ぶに際して「お能の死生観」を選んだ理由は、親友の金井雄資師が重要無形文化財の能楽師であることだけでなく、その歴史的な背景からです。
能楽、いえ猿楽は不思議な歴史を持つ芸術です。