「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル.51

f:id:syukugami:20200315154202j:plain

私だけでなく、がんを告知された者は、死を恐怖します。

医学の進歩で「治る病気」になったとはいえ、がんという病気への恐怖心は簡単には払拭できないでしょう。

人は死の恐怖心と、どう対処すれば良いのか?

他の人は、どう対処したのか?

私は沢山の事例を知る清水先生から、その情報を得たいと思いました。

沢山の人が可能な対処ならば、私にも可能な対処かも知れない。

そう考えたからです。

しかし、清水先生の答えは

「答えられません」というものでした。

そして、清水先生の答えは「真実」でした。

何故なら、人の人生とはほんとうに「個別」なものだから、死の恐怖への対処もそれぞれだからです。

どんな人も死の恐怖と闘って、やがて受け入れて死んでいきます。

「どんな人にも手数は違っても、詰むことが決まっている詰将棋」と清水先生が「人生でほんとうに大切なこと」の中で語っている通りです。

その清水先生から「死生学」を学ぶことを示唆された私は私は、死の恐怖と戦うことではなく、受け入れることを選びます。

そして、日本人古来の「死生哲学」として、「お能の死生観」を学ぶことにします。

その日本人古来の死生観、日本人独特な死生観を学ぶに際して「お能の死生観」を選んだ理由は、親友の金井雄資師が重要無形文化財能楽師であることだけでなく、その歴史的な背景からです。

能楽、いえ猿楽は不思議な歴史を持つ芸術です。