「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

コントレイル.44

稲垣さんは清水研先生をスーパードクター風に描きませんでした。 けれども、清水研先生がスーパードクターであることは、清水先生と対面した人ならば感じとることができることでしょう。 「この人ならば、話すことができる」 「この人ならば、聴き取ってくれ…

コントレイル.43

私が稲垣麻由美さんが、精神腫瘍学に携わってくれたことを「幸運」と断言するのは、 私は稲垣さんの「学歴」を知らずに「精神腫瘍科の話を書籍にしたい」と相談したからなのです。 そうなんです。 臨床心理士を目指して、系統的に心理学などを学んだ人だから…

コントレイル.42

精神腫瘍医の存在を、たくさんの人に知ってもらいたい。 そのためには、清水研という精神腫瘍医をアイコンとして、スーパードクターとしてしまえば良いのでしょうか? スーパードクター清水研が、死の恐怖に怯える患者の苦悩を快刀乱麻を断つが如く解決する…

コントレイル.41

稲垣麻由美さんの「人生でほんとうに大切なこと」のコラムに次のような一節があります。 「考えてもみてください。精神腫瘍科の医師というのは、目の前に患者さんから、例えば『つらいです。あと半年の命なんです。もうどうすればいいのかわかりません』とい…

コントレイル.40

医師の目的は病気を治すこと。 そう考えてしまうと、 精神腫瘍医の目的は、がん患者やその家族の適応障害などの病気を治療すること になってしまうでしょう。 稲垣麻由美さんの著書「人生でほんとうに大切なこと」の最後の章は、清水研先生の「私が精神腫瘍…

コントレイル.39

とはいえ「死生観」がほんとうに必要だと思いはじめたのは、清水先生との対話を一年近く重ねたからです。 がんは私の人生の一つのエピソードに過ぎない。 そうです。 ほんとうは「死生観」を持っていても、いなくても、 死ぬことに変わりはありません。 私が…

コントレイル.38

「死を覚悟した人間」 といってもさまざまかもしれません。 清水先生と出逢った頃の私は、 死から逃れられないことを知って、金縛りのように立ち尽くしている頃でした。 「人生でほんとうに大切なこと」 の第四話に描かれる言葉。 「将棋で人生を語るとした…

コントレイル.37

もしも、私が出逢った精神腫瘍医が、清水先生でなかったならば…。 現在は違ったものになっていただろう。 そのことは断言できます。 「ああ、この人は自分のような人間を毎日みているのだ」 清水先生との初対面の場面で、 稲垣先生は「人生でほんとうに大切…

コントレイル.36

緩和ケア担当医と清水先生との相談で「減薬」の次のステップを始めることになりました。 最初のステップは、オキシコドンをナルサスに置換する、というものでオキシコンチンという麻薬成分の量を減少させるものでした。 次のステップとは、具体的には朝2錠夕…

コントレイル.35

もしも、逆の立場であったたなら。 私は自分が与えてもらったように、 誰かに与えることができるだろうか? 大澤さんが私に対して注いでくれた厚情を、 私は大澤さんに注ぐことができるだろうか? そんなことを考えたこともあります。 もちろん、気持ちは注…

コントレイル34

大澤さんの言葉は、私の「会社のお荷物になる」という恐怖心を払い退けます。 会社のお荷物になる ↓ 他人様に迷惑をかけること(恥ずかしいこと) ↓ 恥ずかしいことを続ける ↓ 恥知らず という私の「負のスパイラル」は止まりました。 なんのことはない。 私…

コントレイル33

「ビジネスマンは、常に100%のパフォーマンスを発揮することはない」 大澤さんは私に説明します。 「人生、晴れの日も有れば、雨の日もあります」 大澤さんはニコニコと話します。 「体調もそうです。身体はもちろん、精神状況にもアップダウンはあります」 …

コントレイル32

「会社のお荷物」になるか。 「家族のお荷物」になるか。 2016年の私は、その二択しかないように思います。 当時の私は、強くなり続ける痛みと、 強くなった痛みを鎮めるために、 種類と量が増えた鎮痛剤の副作用に苦しんでいました。 鎮痛剤の副作用には、…

コントレイル.31

「5年以内に95%の確率で死ぬ」 という宣告を受けた時に、 私は、私に親しい 「静かに大切な人たちとの時間を持つ」 という選択肢を取ることも考えました。 そうでなくても、「痛みを堪えて」あるいは「痛みを抑えて」働らくことは、簡単ではありません。 趣…

コントレイル.31

「5年以内に95%の確率で死ぬ」 という宣告を受けた時に、 私は、私に親しい 「静かに大切な人たちとの時間を持つ」 という選択肢を取ることも考えました。 そうでなくても、「痛みを堪えて」あるいは「痛みを抑えて」働らくことは、簡単ではありません。 趣…

コントレイル.30

まずは毎日働く。 通勤する。 会社にいる。 人と一緒にいる。 病気になる前にできていたことは、 簡単にできるはずでした。 だって、治療は終わっていましたから。 けれども、治療が終わっても、 私の病気が治ったわけではありません。 がんが身体の中に「い…