コントレイル.37
もしも、私が出逢った精神腫瘍医が、清水先生でなかったならば…。
現在は違ったものになっていただろう。
そのことは断言できます。
「ああ、この人は自分のような人間を毎日みているのだ」
清水先生との初対面の場面で、
稲垣先生は「人生でほんとうに大切なこと」の中で、
私の次の言葉を拾い上げてくれています。
「自分のような人間」
というのは、
「死を覚悟した人間」
という意味です。
清水先生と対面した人ならば同感してくれると思います。
清水先生は、不思議な佇まいを感じさせます。
今にして思えば、清水先生が対話を重ねてきた人々、
沢山の「自分のような人間」との対話が、
清水先生の佇まいを形作っているのでしょうか。
とにかく、私はようやく話し相手と出逢った気持ちになりました。
そのことは、今でもはっきりと憶えています。