「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル.36

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緩和ケア担当医と清水先生との相談で「減薬」の次のステップを始めることになりました。

最初のステップは、オキシコドンナルサスに置換する、というものでオキシコンチンという麻薬成分の量を減少させるものでした。

次のステップとは、具体的には朝2錠夕2錠服用していたナルサスを、朝1錠夕2錠に。朝の1錠分が抑えていた痛みは、レスキューのオキノームで補うという作戦です。

また、最近息苦しさを覚えることから、清水先生からレクサプロが処方されました。

ナルサス1錠分の痛み。正しくはナルサス1錠が抑えていた痛みが感じられます。痛みという定量化できないものが、定量化されるようです。

こんな記述は誰の役にも立たないでしょう。

けれども、私が振り返ることがあれば思い出になります。

役に立つ、役に立たない、

それさえ自分が決めるべきことなのか、自分以外の人間が決めることなのか、よくわからなくなりました。

お能は、人だけでなく、例えば昆虫や植物が主人公になる。国土草木悉皆成仏といって、生き物でないものも「鎮魂」するのがお能です」

金井雄資師がそう語って紹介してくれた「胡蝶」。

春夏秋の花たちと戯れた胡蝶の、冬に咲く梅への無念を鎮魂する物語。

雄資師のご子息である金井賢郎師が舞う「胡蝶」を観ることができた日に、減薬を始めたことも自分だけの動機です。

私の死生観が、お能の死生観への共感からはじまっていることを、あらためて意識しています。