「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

5%の5年間.死を受け容れる2

能楽師でもある金井雄資師とは、大学時代からの40年来の親友。

一方の大澤健次さんとは、2009年に出張先で出会ってからの付き合いです。

青年時代からの友人と知名を過ぎてからできた友人が、

良き友人になるであろうと、この二人を初めて引き合わせたのは、

「銀座なのに安い・静か・変な客がいない」我らのアジトのようなバーでした。

 

金井師は、「実社会で活躍する(堅気の)実務者」に会えることを

大澤氏は、「能楽師重要無形文化財」に初めて会えることを、

楽しみにしていました。

お能を観たことがないという大澤さんは、いつものおおらかな謙虚さで

「乱暴な質問ですが、お能とは、一言でいうと、何でしょうか?」

と尋ねます。

金井師は、公益社団法人能楽協会の理事を務めることから、

大澤さんの問いと類似の質問を受けることがあるらしく、よどみなく応えます。

お能とは、生者と死者との邂逅。だとお答えしています」

 

この二人の会話は、映画の名シーンのように私の脳裏に映像として残っています。

 

能楽は、室町時代から現代まで続けられてきた、実在する芸能です。

それは、「生者と死者との邂逅」を、日本人が受け入れてきた歴史でもあります。

 

これは、日本人は「死者の霊魂が存在する」ということを信じてきたという

歴史的な事実である。と、私は思いました。

こうして、私は「人は死んだら霊魂になる」ということを、信じました。

私は、霊魂が存在することを宗教的な動機ではなく、

日本人は古来から霊魂の存在を信じてきた。(ことになっている)

という歴史的な事実として理解したのだと思います。

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話

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