レジリエンス外来.50
稲垣先生の「ハッピーエンド」で、
私は再度、金井雄資師から教わった「夢幻能」を思いました。
この世に未練や無念を残した者たち。
彼らは英雄の場合もありますが、敗北者であったり、無名な人だったりします。
彼らの多くは死者です。
そんな彼らが「ワキ」の問われるままに、自身の身に起こった物語を語ります。そして、物語を語り尽くすと、彼らは一様に「成仏」することを含めて、
自分の「夢を叶えて」舞台から消えてしまいます。
「鎮魂歌であるからこそ、生命賛歌なんだ」
金井雄資師の言葉が理解できました。
そして私は、彼の舞台はもちろんですが、彼の父君の舞台も、彼の令息の舞台をも観ていました。
「命が舞台の上で引き継がてゆく」
などというと、スピリチュアルが過ぎるでしょうか。
とにかく、私たち日本人は、室町時代からこのかた、独自の死生観を持っていたのです。
そして、清水研先生は、夢幻能の「ワキ」のように、がん患者に寄り添うことができるのです。
自分の物語を考えると、こんなこともわかります。
「がん宣告を受けて、死を受け容れる必要などない」