「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

レジリエンス外来.50

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稲垣先生の「ハッピーエンド」で、

私は再度、金井雄資師から教わった「夢幻能」を思いました。

この世に未練や無念を残した者たち。

彼らは英雄の場合もありますが、敗北者であったり、無名な人だったりします。

彼らの多くは死者です。

そんな彼らが「ワキ」の問われるままに、自身の身に起こった物語を語ります。そして、物語を語り尽くすと、彼らは一様に「成仏」することを含めて、

自分の「夢を叶えて」舞台から消えてしまいます。

「鎮魂歌であるからこそ、生命賛歌なんだ」

金井雄資師の言葉が理解できました。

そして私は、彼の舞台はもちろんですが、彼の父君の舞台も、彼の令息の舞台をも観ていました。

「命が舞台の上で引き継がてゆく」

などというと、スピリチュアルが過ぎるでしょうか。

とにかく、私たち日本人は、室町時代からこのかた、独自の死生観を持っていたのです。

そして、清水研先生は、夢幻能の「ワキ」のように、がん患者に寄り添うことができるのです。

自分の物語を考えると、こんなこともわかります。

「がん宣告を受けて、死を受け容れる必要などない」

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