「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

二つ目の物語

レジリエンス外来.61

「前に、有限なモノもつなげる意志が有れば無限になるっていう話をしたよね」 金井さんと食事をしながら「死生観」の話をしたことがありました。金井さんは「爪楊枝」を並べながら教えてくれます。 「お能は室町時代から現在まで続いているけど、能楽師の命…

レジリエンス外来.60

金井さんは歴史的な背景から教えてくれます。 能聖とされる世阿弥によって大成された能楽は、安土桃山時代を経て、江戸時代には徳川幕府により「式楽」いわゆる「日本の芸能・芸術」と位置付けられたこと。 「お能の中の日本人は、室町時代の日本人ですね」 …

レジリエンス外来.59

稲垣先生の取材を受けるにあたって、金井雄資師は水道橋の宝生能楽堂を取材場所に選んでくれました。 能舞台の構造や能面(おもて)をつけた時に能面の眼=孔(あな)からの狭い視野の中で「何を目印にして舞台に立つか」などを、実際の橋掛かりや能舞台で説…

レジリエンス外来.58

「ところで金井さんは何と言ってましたか?」 大澤団長の質問に、私は答えていませんでした。 金井雄資さんとは大学の入学式の時に知り合いました。 「スターというのは、こういう人のことをいうのだな」 私は金井さんのおかげで「本物のスター」を知ること…

レジリエンス外来.57

2019年10月17日。食道の腫瘍の細胞検査の結果。 「悪性の所見無し」 とのことです。ご心配をおかけしました。 細胞検査の結果がこんなにあっさり出ることもあるのだと、感心しました。今後の対応については、がんセンターの主治医と相談することになります。…

レジリエンス外来.56

「千賀さんが、シンデレラか白雪姫か、という問題ですが」 と、応援団長こと大澤さんが雑なまとめ方をします。 この大澤さんは、まさに「応援の名人」なのです。例えば 「私が事務局をやりますから、最年長組長さんが会長をやってください。千賀さんの奥さん…

レジリエンス外来.55

「でも、それじゃ「白雪姫と七人の小人」じゃないですか?」 いよいよ出版が決まりました。 稲垣先生は編集の清水能子さんに「何度も書き直しを命じられながら」の執筆中です。 応援団は、「販売戦略会議」と称する飲み会です。 「主役は千賀さんでしょ? 落…

レジリエンス外来.54

ああ、まだまだ、「人生でほんとうに大切なこと」が 「出版がされる前」の世界から、現在に話を飛ばしてしまいました。 2016年に話を戻します。 当時の「能楽の死生観と精神腫瘍学を紹介するような書籍」というコンセプトの本は、それ以前に、 「がんの本は…

レジリエンス外来.53

それは、私が通医する国立がん研究センター中央病院の2階A外来の待合で起きた小さな「事件」でした。 治験の点滴を受ける前の診察を、私は待合で待っていました。 いきなり、怒声が響きました。 読んでいた本から顔を上げると、お婆さんが杖を上手く使えず…

レジリエンス外来.52

清水先生の往診室。 私が扉を開けて部屋に入ってゆく様は、「人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話」に描かれているとおりです。 しかし、その逆はどんな風に見えるのでしょうか? 扉が開くたびに、まったく違う、切迫し…

レジリエンス外来.51

38℃を越える高熱を、短期間のうちに何日も発熱してしまい、正直、戸惑っています。 これが「痛み」ならばオキノームを連続服用して震えて我慢することができます。 ところが、「高熱」と「関節痛」となると、ふらついてしまい、立ち上がること、歩くことがで…

レジリエンス外来.50

稲垣先生の「ハッピーエンド」で、 私は再度、金井雄資師から教わった「夢幻能」を思いました。 この世に未練や無念を残した者たち。 彼らは英雄の場合もありますが、敗北者であったり、無名な人だったりします。 彼らの多くは死者です。 そんな彼らが「ワキ…

レジリエンス外来.49

清水先生が沢山のがん患者の物語を聴いたように、 稲垣先生も、沢山の成功者といわれる人たちの物語を聴いてきました。 稲垣先生は、「ハッピーエンド」というキーワードが、私を動かすであろうことを知っていたのかも知れません。 とにかく、私は稲垣さんに…

レジリエンス外来.48

「千賀さん、みんなはハッピーエンドが好きなんです。私は千賀さんの希望に満ちた物語が書きたいです」 ハッピーエンド! 文筆家稲垣先生も言葉に、私は呆然としました。 しかし、稲垣さんの「みんなはハッピーエンドが好き」という言葉は本当なことだと思い…