レジリエンス外来.56
「千賀さんが、シンデレラか白雪姫か、という問題ですが」
と、応援団長こと大澤さんが雑なまとめ方をします。
この大澤さんは、まさに「応援の名人」なのです。例えば
「私が事務局をやりますから、最年長組長さんが会長をやってください。千賀さんの奥さんと金井さんは顧問、あとのリッキーとかが会員でスタートします」
と、すらすらすらりと、「千賀さんを応援する会」という恥ずかしい名前の団体?を作ってしまいました。
(応援する会のはずが「応援団長」になるのはご愛敬)
そして、千賀夫婦が稲垣先生に、本の企画を相談する際にも同行してくれました。
その応援団長、大澤さんが私に尋ねます。
「そうそう金井さんは、何か言ってますか?」
「そういえば、大澤さんが金井さんに初対面の時に、「お能とは、ズバリ、何ですか?」って質問したのはこの店のこの席でしたね」
私は簡単に脱線してしまいます。
「はい。「生者と死者との邂逅です」とね、かいこうの字まで説明してくれました」
大澤さんも懐かしく語ります。
「そういえば、金井さんは初対面の私たちに、別れ際に「千賀をよろしくお願いします」って、頭を下げていましたね」
しみじみと割り込んでくるのは「会長」です。
「私たちも、「このお方に頼まれたら、千賀さんによろしくしなきゃ、って思ったものです」
「やっぱり、金井さんはスターって感じですよね」
こちらは最年少団員のリッキーです。
「まてよ、スター金井や応援団のみんなに守られてる「お姫様キャラ」だから、私はシンデレラか白雪姫なのか?」
それはさておき、私が解説を始めます。
「千賀のシンデレラ物語じゃ、出版出来ないんでしょうね。なにしろ、千賀は「無名」ですから」
「国立がん研究センターの看板が無ければ、清水研さんも無名。稲垣さんも無名。金井さんでさえ、世間的には有名人とはいえません」
「そして有名人の物語でなければ、商業出版は出来ない。有名人の物語ならば、世間の人は知りたいと思う。つまり、売れる」
「では、私たちの手持ちのカードで世間の人が知りたいと思うものは何か?」
「だから、清水研先生が、さまざまな患者と対話することで、がん専門の精神科医の姿を描いたわけですね」
「そして何より「無名」の人たちの一人ひとりに「物語」があることも描かれています」
「それぞれに「ほんとうに大切なこと」があることもね」
「なるほど、清水先生のビビデバビデブーとか、千賀さんのはいほーの話ではない、ということですね」
「さすがは稲垣先生!」
「そりゃあそうさ。なんたって、私たちが選んだ「文筆家」だからね」
「いや、清水能子さんが凄いのかも」
タイトルは
「人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話」
著書は、稲垣麻由美
この本が、未来に繋がります。