レジリエンス外来.45
私の視線を180度巡らす。
絶望から希望への180度。俯いていた私が、天を見上げるようになったのことは、
清水先生との「セッション」の成果です。
しかし、それだけではありません。
親友の能役者金井雄資から学んだ、
「能楽は鎮魂歌であるからこそ、生命賛歌である」
ということ。
この言葉は、私が頭を上げるきっかけになりました。
日本独特の「反語的な表現」があります。
生と死は、同じコインの裏表であるように、常に隣合わせにある。
死は常にそこにある。同時に命もそこにある。
文筆家稲垣麻由美さんは、取材として、私と一緒にこの金井師の言葉を聴いていました。
その稲垣麻由美さんが、私に問いかけてきました。
「千賀さんは死ぬ準備を進めていますよね」
そうです。稲垣さんには、その準備の記録を綴っていただきたいと思っていました。
「私は千賀さんに生きていて欲しいです」
稲垣さんの声は震えていました。
「私はもちろん、金井さんも大澤さんも、いえ千賀さんを知る誰もが、千賀さんには生きていて欲しいと祈っています」
稲垣さんは声を震わせて続けました。
「それなのに、千賀さんは、何故、生きようとしないのですか?」
稲垣さんのこの問いに、私は瞳を射抜かれたような衝撃を受けました。