「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

レジリエンス外来.45

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私の視線を180度巡らす。

絶望から希望への180度。

俯いていた私が、天を見上げるようになったのことは、

清水先生との「セッション」の成果です。

しかし、それだけではありません。

親友の能役者金井雄資から学んだ、

能楽は鎮魂歌であるからこそ、生命賛歌である」

ということ。

この言葉は、私が頭を上げるきっかけになりました。

日本独特の「反語的な表現」があります。

生と死は、同じコインの裏表であるように、常に隣合わせにある。

死は常にそこにある。同時に命もそこにある。

文筆家稲垣麻由美さんは、取材として、私と一緒にこの金井師の言葉を聴いていました。

その稲垣麻由美さんが、私に問いかけてきました。

「千賀さんは死ぬ準備を進めていますよね」

そうです。稲垣さんには、その準備の記録を綴っていただきたいと思っていました。

「私は千賀さんに生きていて欲しいです」

稲垣さんの声は震えていました。

「私はもちろん、金井さんも大澤さんも、いえ千賀さんを知る誰もが、千賀さんには生きていて欲しいと祈っています」

稲垣さんは声を震わせて続けました。

「それなのに、千賀さんは、何故、生きようとしないのですか?」

稲垣さんのこの問いに、私は瞳を射抜かれたような衝撃を受けました。

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