「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

レジリエンス外来.54

ああ、まだまだ、「人生でほんとうに大切なこと」が

「出版がされる前」の世界から、現在に話を飛ばしてしまいました。

2016年に話を戻します。

当時の「能楽の死生観と精神腫瘍学を紹介するような書籍」というコンセプトの本は、それ以前に、

「がんの本は、がん患者自身かがん患者の医師が書くものだ」という不文律のようなものがハードルとなって、出版社の編集会議で採用されませんでした。

「編集者の共感は得ているのですが。残念です」

文筆家稲垣先生は、その時は出版プロデューサー稲垣社長として報告してくれます。

やがて稲垣先生から一つの提案がありました。

それは、精神腫瘍科医清水研先生と能楽師金井雄資師の初対面の席での提案でした。

それは、「能楽の死生観」の要素を除きたい。

という提案でした。

能楽の死生観と精神腫瘍学の二つを一つの本にまとめることは、難しいですし、読書にとっても難しい本、になってしまう恐れがありますので…。」

稲垣先生の苦しい提案を、まず、金井師が受け容れます。

「もともとが千賀と清水先生の対談のような本だと思ってました。それに、能楽の死生観の本は、他にもあるんだよ」

私としては、私の「遺言」の中に能楽の死生観が入らないことは不満ではありました。

けれども、「読者にとっても難しい本」というものは避けねばなりません。

なにより、「ハッピーエンド」にしなければなりません。

私は不満ながらも、「精神腫瘍科医と私の対談」という遺書のコンセプトに合意しました。

それが2016年10月のことでした。

※とはいえ、「人生でほんとうに大切なこと」の中で、私が思う「能楽の死生観」が金井雄資師のエピソードと見事に描かれていたことは、みなさんのご承知のとおりです。

そして、2017年の4月に「伝説の編集者」清水能子さんの登場で、「稲垣さんの著書」の出版は一気に現実的な話になります。

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