「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

5%の5年間.8 死んだらどうなるのか

人は死んだらどうなるのか?

人は死んだら、何処にいくのか?

この問いに対して、日本人は独特の答えをもっている。

 

そのことを知識として得たのは、ノンフィクション作家の稲垣麻由美さんが

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話

を執筆するために、能楽師金井雄資師をインタビューした折でした。

金井師は、「あの世は、遥か遠くにあるのではないのではないか」

というような話をしてくれました。

 

能楽師という存在は、日々、霊魂に接する?という稀有な職業です。

そんな能楽師金井師の言葉に、

「死後に遥か彼方の天国や地獄ではなく、近場にある『他界』に行く」

ということをイメージしました。

 

能舞台には、舞台と幕をつなぐ、「橋掛り」という場所があります。

歌舞伎などで云うところの『花道』のような場所と云えばわかりやすいでしょうか。

既に「この世」を去った死者は、この「橋掛り」を通って「この世」を表す舞台に登場します。

 

「死んだら取りあえず『橋掛り』にいれば良いのか」

そう思った私は、何故かとても安心しました。

 

見も知らぬ遥か彼方の天国や地獄などではなく、

見知った人々が生きている姿を見守ることができる近場の『他界』に行く。

きっと「他界」が「見守ることができる近場」にある

というイメージに、単純に安心したのだろうと思います。

 

私に連なる先祖代々が往った場所、

それが『他界』ならば、そこは日本人に独特の場所でしょう。

私は信仰するのではなく、歴史の一部として、その知識を得ました。

信仰するのではなく、歴史として知る。

このことも、私はとても気に入りました。

 

だって、

「不治の病になって何かの信仰にはしった」

って知られたら、みんなに余計に心配されてしまいますからね。

 

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話

 

 

私の死生観ができた