「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル78

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話

私は清水先生とで「人生でほんとうに大切なこと」つまり「人の本来の幸せとは何か」ということについて語り合います。

 

その中で「今」「今日」という言葉がキーワードになります

 

 色は匂へど散りぬるを わが世誰ぞ常ならむ

 有為の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔ひもせず

                   「いろは歌

 匂うが如く咲き誇ろうとも、あらゆる花は散ってしまう。

 この世において一体何が常であろうか、何もない。

 だから私は有為転変の無常世界を越えていこう。

 こちらで、夢を見たり酔っ払っていないで。

 

 ここでは、「今日」は「明日」への通過点としてとらえられています。 

 

 この世のことはどうでもいい。

 この世では、失っても失っても生きていかねばならない。

 ならば、いっそ、来世を生きていたい。

 

 そんな「死生観」が流行した時代もありました。

 鎮護国家のためであった仏教が、庶民まで伝わってくると、

 無常感や輪廻思想が優勢になってくるからのようです。

 

 ここでは「今日」は「明日」のための「今日」でしかありません。

 「今日」は「明日の前の日」の意味しか持ちません。

 

 とはいえ、みんながみんな、同じ「死生観」を持っていたわけでもありません。