コントレイル.84
自分にとっての「人生でほんとうに大切なこと」を、ようやく言語化できた時のことは、よく覚えています。
それは、去年の年末のこと、一年の最後の清水先生の外来の時間でした。
「先生、私の「ほんとうに大切なこと」というのは、「私の機嫌が良い」ということです」
「それが千賀さんの、長い道のりの末にたどり着いた言葉なのですね」
「はい。私の機嫌は、例えば妻の機嫌が良いと、私の機嫌も良くなります。
清水先生の機嫌が良いと、私の機嫌が良くなります」
「なるほど」
「この機嫌が良い時間のことを、きっと幸せというのだ、ということに、私はたどり着きました」
その「道のり」についての説明が始まります。
「「ブラタモリ」というTV番組があります」
私は事例を挙げて説明します。
「タモリさんが、その地域の歴史や地形を紹介する番組ですが、観ていると機嫌が良くなります」
清水先生がうなずきます。
「別に地形なんかに興味が無くても観ていると楽しい。
何故かなと考えたら、タモリさんの機嫌が良いからだ、ということに気づいたのです。つまり、機嫌が良いタモリさんを観るのが楽しいんです。
もちろん、私がタモリさんを好きなことは重要です。
そうです。自分が好きな人がご機嫌が良いと、自分もご機嫌になるわけです。
ああ、赤ちゃんの笑顔も同じかも知れません。
ご機嫌は伝染、伝播します」