「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル.87

星の王子さま (新潮文庫)

 

7人の名医が語る「忘れられない患者」

http://www.asmss.jp/2019/syuuasahi0301.pdf


「おや、それでは私が千賀さんを選ばなかったら、

 千賀さんは「何者」にはなれなかったということですか?」

 

 清水先生は片眉を動かして尋ねてきます。

 

「そうですね。選ばれなかったら残念だったかも知れませんね。
 でも、清水先生には、あの「人生でほんとうに大切なこと」に登場する

 「舌がんの患者さん」もいらっしゃる。他にも若い患者さんとか。
 まあ、その中で選んでいただき光栄です」

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話

 

 私は少し口角を上げて続けます。

 

「ただ、そのこととは関係なく、「何者」にもならなくても良いのだ

 ということに気づくようになりました。

 それは、サン・テグジュペリの「星の王子さま」を読み返したからなのです」

 

 清水先生が椅子の中で座り直します。

 

「「星の王子さま」は、

「特別な存在」だと思い込んでいた花が、
 実は薔薇という「ありきたりな存在」でしかなかったことを知って

 落胆した王子さまが、キツネから、

 たとえ「ありきたりな存在」でも、愛しみ続けることによって「特別な存在」になる

 ことを学ぶ。という物語にも読めます」

 

 私は「個人の感想」を展開しました。

 

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話