「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コイントレイル96

死ぬことと見つけたり 上下巻セット

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話

清水研先生の言葉は続きます。

「死の社会学いう視点から見ると、産業革命以降、日本では宗教を失い、

 死からも遠ざかって、人間はなぜ生きるのかということを日々考えなくなった

 といわれています。今の我々は、死ぬということを考えないから、

 一年後、五年後、十年後をどうしようかと先々のことばかり捉えて、

 今日この一日、今、ここを生きていない

 ということになっているのではないでしょうか」

 

千賀さんはうなずく。

 

「人間は今、この瞬間しか生きていないのです。

 例えば、すごくきれいな自然を見たとき、

 その自然を感じる感性をなくしてしまう

 ということは、すごくもったいないことです。

 日本人の昔から持っている無常観、もののあわれというような。

 がん患者さんが桜の花が散る様子を見て心から感動するというのは、

 今、この瞬間がかけがえのないことをわかっているからなのです」

 

「死を意識するからこそ、いかに生きるかということを、

 より人間は真剣に考えるようになります。

 だから、生きるということと死ぬということは表裏一体なんだ、

 という考え方になります」

 

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話