「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル.8

http://www.asmss.jp/2019/syuuasahi0301.pdf

「おや、それでは私が千賀さんを選ばなかったら、千賀さんは「何者」にはなれなかったということですか?」

清水先生は片眉を動かして尋ねてきます。

「そうですね。選ばれなかったら残念だったかも知れませんね。

でも、清水先生には、あの「人生でほんとうに大切なこと」に登場する「舌がんの患者さん」もいらっしゃる。他にも若い患者さんとか。

まあ、その中で選んでいただき光栄です」

私は少し口角を上げて続けます。

「ただ、そのこととは関係なく、「何者」にもならなくても良いのだということに気づくようになりました。それは、サン・テグジュペリの「星の王子さま」を読み返したからなのです」

清水先生が椅子の中で座り直します。

「「星の王子さま」は、

「特別な存在」だと思い込んでいた花が、

実は薔薇という「ありきたりな存在」でしかなかったことを知って落胆した王子さまが、

キツネから、たとえ「ありきたりな存在」でも、愛しみ続けることによって「特別な存在」になることを学ぶ。

という物語にも読めます」

私は「個人の感想」を展開しました。

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