「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル.9

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「何者かになる、ということは、多くの人にとっての「特別な存在」になる、ということなのでしょう」

私の説明を清水先生は納得してくれたようです。

「けれども「特別な存在」になることが、「何者かになる」ということならば、私には、何者かになる必要はありません」

清水先生の顔に笑みが浮かびます。

「はは。そうです。私には、すでに沢山の「特別な存在」がいます。い家族、友人、例えば清水先生」 

清水先生の顔が晴れます。

「そして、その人たちから「特別な存在」として扱ってもらっています」

「何者かになんかならなくても、特別な存在になることはできる。なにより幸せになることができる。そのことに気づいたのは、清水先生のおかげです」

「清水先生は、適応障がいで迷子になった私を、一緒に迷子になってくれました。清水先生のおかげでここまでたどり着きました」

去年の今頃、私は清水先生にそんなことを話していました。