コントレイル.13
「先生「人生でほんとうに大切なこと」が、重版になりましたよね。これは、「もしも一年後、この世にいないとしたら」のおかげ、あの大宣伝のおかげだと思うんです」
私の言葉に、清水先生は、沈黙で先を促します。
「あの本の「おわりに」で、私と稲垣さんと本の名前を先生が書いてくれました」
「でね。「運が良いのは誰か?」ということを考えたんです」
「だってそうでしょう?普通、絶版になっちゃうでしょう?出版されて2年経った本なんて、フェードアウトしちゃう」
「でも、あの本は、絶版にならなかった。明らかに「運が良い」んです」
「私か?、稲垣さんか?、清水先生か?あるいは「人生でほんとうに大切なこと」か」
私は指を折って数えます。
「で、思ったんです。「これは精神腫瘍学が持つ「運」かも知れない」って」
私はもうひとつ指を折ります。
「つまり「精神腫瘍学が運が良い」ということかな。って」