「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

5%の5年間.死を受け容れる 5

世阿弥の世界 (集英社新書)

5年生存率5%の期間が終了しても、死について意識しない日はありません。

 

「命に終わりあり 能には果てあるべからず」世阿弥の言葉です。

 

人の命は、必ず死ぬ。

そのことを、誰もが知識としては知っている。

けれども、知識で知っていることと、理解していることは違います。

 

好評のうちに終了した、テレビドラマ「俺の家の話」の最終回では、

主人公の死を、主人公自身も父親も受け容れることができずにいました。

そして、主人公の死を、互いに受け容れる美しいシーンが描かれました。

 

「能には果てあるべからず」という世阿弥の言葉。

これは、一人の人間の命という時間には限りがあるけれども、

能を極めていくために、意志を持った人間たちが、前人の技を継いでゆくことで

有限なものを、繋げていくことで、無限に続けてゆくことができる。

という意味なのでしょうか。

 

さらに、世阿弥の時代、「能」という言葉は「物語」という意味があったとのこと。

「誰かの命に終わりあり、(けれども)その生きた物語には果てはない」

 

とも、読めるような気がします。

 

誰もが「生き切る」ことで人生をかけて「物語」をつむぎます。

そして、その「物語」は、その誰を愛した人たちによって、語り継がれていく。

 

そんなことを考えながら、「俺の家の話」を楽しく観ておりました。

 

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