「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル.3

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自分にとっての「人生でほんとうに大切なこと」を、ようやく言語化できた時のことは、よく覚えています。

それは、去年の年末のこと、一年の最後の清水先生の外来の時間でした。

「先生、私の「ほんとうに大切なこと」というのは、「私の機嫌が良い」ということです」

「それが千賀さんの、長い道のりの末にたどり着いた言葉なのですね」

「はい。私の機嫌は、例えば妻の機嫌が良いと、私の機嫌も良くなります。清水先生の機嫌が良いと、私の機嫌が良くなります」

「なるほど」

「この機嫌が良い時間のことを、きっと幸せというのだ、ということに、私はたどり着きました」

その「道のり」についての説明が始まります。

「「ブラタモリ」というTV番組があります」

私は事例を挙げて説明します。

タモリさんが、その地域の歴史や地形を紹介する番組ですが、観ていると機嫌が良くなります」

清水先生がうなずきます。

「別に地形なんかに興味が無くても観ていると楽しい。何故かなと考えたら、タモリさんの機嫌が良いからだ、ということに気づいたのです。つまり、機嫌が良いタモリさんを観るのが楽しいんです。もちろん、私がタモリさんを好きなことは重要です。そうです。自分が好きな人がご機嫌が良いと、自分もご機嫌になるわけです。ああ、赤ちゃんの笑顔も同じかも知れません。ご機嫌は伝染、伝播します」