コントレイル.59
「花とは、咲くによりて面白く、散るによりてめづらしき也」
花が咲くことと散ることを一対に語っています。
この言葉は、「世阿弥の美学」をあらわしている。
そう、伝えられています。
しかし、私は思うのです。
この言葉は、世阿弥が古来からの「日本人の美学」を読みとったものではないか。と。
平安の頃、花といえば、梅を意味したといいます。
冬を破って咲く梅は花が可憐で香りが豊かです。
しかし、いつしか、花といえば、桜を意味するようになります。
桜は、咲いてよし、散ってよし。と、いわれます。
桜の花が、「花」を意味するようなった頃、
日本人のひとつの美学が固まったのかもしれません。
そして、それには武士道の存在が関係しているように思います。
もちろん、武士の公式の芸能である能楽も。
やがて
「花びらは散る。しかし、花は散らない」
という言葉もうまれます。