「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル73

「わからないことは、怖い」

 このことは、全てのことに通じるかも知れません。

 現在、世界に蔓延する「コロナ禍」も、相手が「未知のウイルス」という「わからない」

ことが、人々の恐怖を増幅しているようにも思えます。

 

 当時の私が「わからない」ことは、「痛み」に関わることでした。

 

 2015年6月に発現。発現の理由は、胸部の疼痛と激しい咳からでした。

 9月に入院し放射線抗がん剤の化学療法を集中治療して10月に退院しました。

 「5年生存率5%を20%にする治療」の結果は思いの外成功したとのことで、

 「肺とリンパ節の腫瘍は半分程度に小さくなった」との診断でした。

 この頃の私の痛みは、入院中から服用していた医療麻薬で完全にコントロールができていました。

 そのまま、11月から翌年2016年10月までの12ケ月の間、2週に1度、抗がん剤の新薬開発の治験者として新しい抗がん剤の投与を受けます。

 

 私の痛みは、2016年の春頃から、コントロールができなくなってしまいます。

 後になって思えば、復職を果たした頃から痛みは酷くなっていました。

 医療麻薬は、花粉症の薬などと同様、12時間聞き続けます。

 しかし、処方されている量では痛みを抑えることができなくなります。

 また、痛みは酷くなるだけでなく、痛みの種類も増えているように感じます。

「転移しているのではないか?」

 私はそう思います。なにしろ、私があと4年間で死ぬ確率は、80〜95%なわけです。

 しかし、CTの検査結果では、転移もありません。

 この頃の私は、痛みの他に「息苦しさ」にも悩まされます。

 呼吸が上手くできないのです。といっても、物理的なことからではありません。

 普段は無意識にしている呼吸を、意識してしようとしてしまうのです。

 いわゆる「パニック障害」の過呼吸になってしまうことが何度もありました。

 

 ここから

  「涙が止まらない」

 →「心までポンコツになった」

 →「清水先生と出会う」

 という展開になったのわけです。

 

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話