「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル98 医療麻薬

言葉は記号の一つですが、人は言葉に縛られます。

私は長い間「医療麻薬」という言葉に縛られていました。

 

5年前の入院時から、オピオイド系の鎮痛剤を使っています。

これはアヘンに含まれるアルカロイドのデバインから合成される半合成麻薬です。

麻薬及び抗精神薬取締法における麻薬で劇薬の扱いです。

WHO方式がん疼痛治療法において最終段階で用いられるクスリになります。

 

この薬を服用する時に、私は抵抗感を感じていました。

この薬を飲むたびに、私は自分の寿命を前借しているように感じていました。

 

「飲んでいる薬が医療麻薬だからでしょうか。

 あまりに鮮やかに消えるのです。

 本来、私が引き受けるべき痛みが私の中から消えたと思っていたら、

 実は知らぬ間にどこかに降り積もってしまっていて、

 いつか来るべき”清算するとき”を待っている。

 そんな気がしてしまいます」

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話

 

ところが、先日、この薬を処方してくださった医師が、

私の「思い込み」を解消してくれました。

 

国立がん研究センター中央病院の緩和ケア科のドクターに、

私は毎月クスリの処方をしていただきます。

ところが、先日、私は予約時間を間違えてしまいました。

長い時間待つことを覚悟した私を見かねたのか、

5年間も通っているので、すっかり顔見知りになった看護師さんが、

担当外のドクターの診察を手配してくれたのです。

 

「このクスリをもう5年間も飲んでいます。長く飲む薬じゃないんですよね?」

 と苦笑する私に、初対面の先生が笑顔で応えてくれました。

 

「日本と法律が異なるアメリカでは、広く利用される鎮痛剤ですよ」

 

時間はかかっていますが、私は確実に着実に自由になっています。

ありがたいです。

 

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