「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

レジリエンス外来.9

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このまま死ねばローンが終わる。

家族にはマンションと遺族年金を遺せる。

「早かったね。残念だけど、苦しまずに済んだね」

皆、そう言って見送ってくれる。

「だから、穏やかに死を迎える準備をしたい」

私がレジリエンス外来に求めたものは、

自分の人生を物語ることで「遺言」を遺す。

ということでした。

私は他人に伝えたかったのです。

私には無念なことがあったのでした。

「がんになるということは、

身体が蝕まれるということだけではない。

死と直面してしまうことで、

そして尋常ではない痛みに襲われることで、

心も奈落の底に落ちてしまう」

という、私が「知らなかった」ことでした。

これは、私が最も無念なことでした。

この無念を、なんとかして他人に伝えたかったのです。

そのためには「物語」を言語化する必要がありました。

そのためには「レジリエンス外来」は最適な場所だと思いました。

さらに、私は「遺言」の書き手を探し出しました。