レジリエンス外来.9
このまま死ねばローンが終わる。
家族にはマンションと遺族年金を遺せる。
「早かったね。残念だけど、苦しまずに済んだね」
皆、そう言って見送ってくれる。
「だから、穏やかに死を迎える準備をしたい」
私がレジリエンス外来に求めたものは、
自分の人生を物語ることで「遺言」を遺す。
ということでした。
私は他人に伝えたかったのです。
私には無念なことがあったのでした。
「がんになるということは、
身体が蝕まれるということだけではない。
死と直面してしまうことで、
そして尋常ではない痛みに襲われることで、
心も奈落の底に落ちてしまう」
という、私が「知らなかった」ことでした。
これは、私が最も無念なことでした。
この無念を、なんとかして他人に伝えたかったのです。
そのためには「物語」を言語化する必要がありました。
そのためには「レジリエンス外来」は最適な場所だと思いました。
さらに、私は「遺言」の書き手を探し出しました。