レジリエンス外来.13
私の「遺言」は、 私が残念に思い残すことを、
書き残すことが、目的です。
そのことで、この世を去る私は慰められます。
私を見送ってくれる人たちも、慰められるかもしれません。
しかし、私は、私のことを知らない人にも伝えたいことがありました。
「精神腫瘍医」の存在。
がんは、想像できないほど痛いこと。
その痛みは身体だけでなく、精神をも蝕むこと。
その痛みは、患者だけでなく、家族や友人にも広がること。
がんを罹患しても、死ぬまでは生きている。
生きているからには、バッドエンドにはならない。
そのことを、私を知らない人にも伝えたい。
それが、私が、残りの時間を使ってやりたいこと、に、なりました。
私の「遺書」は、がん患者の「鎮魂歌」ではなく、
死と直面した人々の「生命讃歌」でなければならない。
私は、私の「遺書」を託す「文筆家」を選ぶ必要に迫られました。
時間の無駄が許されない私でしたが、
不思議と不安はありませんでした。
私には、意中の「文筆家」がいましたから。
ただ、「文筆家」稲垣麻由美さんに託す前に、
私には必要な手続きがありました。