レジリエンス外来.19
「死なないつもり」で生きていた頃の私が、
一番嫌いなことは、
「老いる」ということでした。
「散りぬべき 時知りてこそ世の中の 花も花なれ 人も人なれ」
という、細川ガラシャの辞世に共感していました。
ですから、
「5年以内に95%の確率で死ねる」
という診断は、
老いぼれる前にこの世を退場することができる。
という意味で、あながち私が望まない最期ではありませんでした。
さらに当時の私は
「死ななかったら、どうしようか?」
ということを悩んでいました。
このまま死ねば、マンションのローンは終わり、
家族には遺族年金が残ります。
しかし、もし、死ななかったら、
病気の老人を抱えて、家族は苦しむことになります。
それまでに感じたことがない「痛み」が、
私を襲って来ていました。
この「痛み」を抱えて生きていくことは、
この「痛み」を抱えて老いぼれていくことは、
私には想像したくもない未来でした。
清水先生と稲垣先生は、そんな私の話を黙って聴いてくれました。