「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

レジリエンス外来.19

「死なないつもり」で生きていた頃の私が、

一番嫌いなことは、

「老いる」ということでした。

「散りぬべき 時知りてこそ世の中の 花も花なれ 人も人なれ」

という、細川ガラシャの辞世に共感していました。

ですから、

「5年以内に95%の確率で死ねる」

という診断は、

老いぼれる前にこの世を退場することができる。

という意味で、あながち私が望まない最期ではありませんでした。

さらに当時の私は

「死ななかったら、どうしようか?」

ということを悩んでいました。

このまま死ねば、マンションのローンは終わり、

家族には遺族年金が残ります。

しかし、もし、死ななかったら、

病気の老人を抱えて、家族は苦しむことになります。

それまでに感じたことがない「痛み」が、

私を襲って来ていました。

この「痛み」を抱えて生きていくことは、

この「痛み」を抱えて老いぼれていくことは、

私には想像したくもない未来でした。

清水先生と稲垣先生は、そんな私の話を黙って聴いてくれました。

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