レジリエンス外来.22
こんなことでは、周囲の期待に応えられない。
待ってくれていた仲間の輪に入れない。
そして、その事に自分が気づくということは、さらに自信を失わせることになる。
私は毎日毎日、確実に自信を失っていきました。
そんな私の話を聴いて清水先生は確認してくれます。
「千賀さんは、自分で望んで病気になったわけではありませんよね?」
かつて、私は病気になった自分を責めていました。
その時にも、清水先生は同じような質問をしてくれました。
自分を許す。
私が学んだことは、自分を許す、ということでした。
「千賀さんが家族の為に、痛み止めを飲みながら出勤しているのは、立派だと思います」
清水先生は、時に、励ましてくれます。
痛みを堪えて働くことなど、誰でもやっていることです。
そのことは、がんセンターに来れば、よくわかります。
「誰でもできることかもしれませんが、千賀さんがやっていることが、立派なことなんです」
清水先生は、「自分を責める」私に、「自分を許す」キッカケになる言葉をかけてくれます。
私は病気になって、失ってばかりいたわけではありませんでした。病気から学べることがたくさんありました。
他人の期待や、望みに応えられないことは、たくさんあります。
なにしろ、自分の望みにさえ応えられないのですから。
失ったものは、取り戻せない。
けれども、取り戻せなくてもかまわない。
清水先生との私の対話を、稲垣先生は静かに聴いていました。