「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

レジリエンス外来.22

こんなことでは、周囲の期待に応えられない。

待ってくれていた仲間の輪に入れない。

そして、その事に自分が気づくということは、さらに自信を失わせることになる。

私は毎日毎日、確実に自信を失っていきました。

そんな私の話を聴いて清水先生は確認してくれます。

「千賀さんは、自分で望んで病気になったわけではありませんよね?」

かつて、私は病気になった自分を責めていました。

その時にも、清水先生は同じような質問をしてくれました。

自分を許す。

私が学んだことは、自分を許す、ということでした。

「千賀さんが家族の為に、痛み止めを飲みながら出勤しているのは、立派だと思います」

清水先生は、時に、励ましてくれます。

痛みを堪えて働くことなど、誰でもやっていることです。

そのことは、がんセンターに来れば、よくわかります。

「誰でもできることかもしれませんが、千賀さんがやっていることが、立派なことなんです」

清水先生は、「自分を責める」私に、「自分を許す」キッカケになる言葉をかけてくれます。

私は病気になって、失ってばかりいたわけではありませんでした。病気から学べることがたくさんありました。

他人の期待や、望みに応えられないことは、たくさんあります。

なにしろ、自分の望みにさえ応えられないのですから。

失ったものは、取り戻せない。

けれども、取り戻せなくてもかまわない。

清水先生との私の対話を、稲垣先生は静かに聴いていました。

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