レジリエンス外来.28
「どこの病院でも良いわけないでしょう!
セカンドオピニオンを受けてよ。 一生に一回くらい私のいうことをきいてよ!」
妻は泣きながら続けました。
「あなたはもう諦めてるんでしょう。
でも、私は諦めてないからね」
私は、妻の愛情を嬉しく思いました。
この人と人生を共に生きることができたことを、
誇らしく思いました。
さて、私は、レジリエンス外来のワークシート2 問い2
「がん宣告を受けて感じた気持ちは、時がたつにつれて、どう変わりましたか?」
という問いへの答えを思い出しています。
がん宣告を受けた時に宿った「死を受け容れねばならない」という私の思いは、「がんの細胞検査」を待つうちに、さらに堅いものになりました。
そして、妻の言葉で、さらに強固なものになりました。
妻は私の未来を受け容れようとしていない。
私はその事実に気づいたからです。
私は、「私が居ない未来」を生きる「妻の未来」を考えました。
私の大切な妻が、後悔を抱いて生きていく、悲しい未来を。
それからの私は、治療については妻の方針に従うことにしました。
その結果、国立がん研究センター中央病院と縁ができたのでした。
がん治療について考えてみましょう。
そもそもの医療の治療とは、患者の病気や怪我を治癒することです。
患者本人の為に行われます。
けれども、がん治療は、
「患者の大切な人のために治療を受ける」
という場合があるように思いました。
「私たちは、あの人のために、最善の手を尽くした」
患者は、残された人たちが、そのように思えるような治療を受けるべきだろう。
私は、そう考えたのでした。
がん宣告を受けて、自分の死を受け容れようとする私は、そう考えたのでした。
思えば、私はなんとしても死を受け容れようと、自分に、死を受け容れさせようと、やっきになっていたのでした。