「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル75

イスラム教の論理(新潮新書)

 日本人には固有の死生観がある。

「死について、知らないから怖い」…。のであれば日本人の固有の死生観を知識として知ることで、宗教や信仰に頼ることなく、知性的に死を怖がらなくなるのではないか。

 

私は自分が立てた、上記のような「仮説」に対して、その検証結果を、清水研先生の精神腫瘍科外来受診時に報告する。

私は月に一度の清水先生の外来時間を、上記のように使うことにしました。

 

私には、以前から疑問がありました。

それは、日本人のカミカゼ特攻と、イスラム教徒の自爆テロとの違いです。

 いわゆるイスラム過激派による「自爆テロ」が海外で起きた場合に、現地メディアによって「カミカゼ」と報道される度に、私は違和感を覚えていました。

そして、私は素晴らしい教科書に出会うことができました。

イスラム教の論理」著書:飯山陽 新潮新書

飯山氏は非イスラム教徒でありながらイスラム教を研究しているという希有な存在です。

飯山氏は、「日本人の宗教観」を以下のようにまとめています。 

 「日本人は、概ね、宗教というのは個人の心の内面に関与し世界の平和に貢献するものだと考える傾向にあります。しかしもし、宗教というのは個人の心の内面「だけ」に関与し世界の平和「だけ」に貢献するものだと規定してしまうと、個人の行動に関与し世界を戦いに駆り立てるような宗教は「宗教ではない」ことになります」

 

 しかし、イスラム教とは、日本人が考えるような宗教ではありません。

イスラム教とは、信者の行動を規定し、イスラム教による世界征服を目的とする宗教なのです。日本人が理解することが困難な、世界観や死生観を持った宗教なのです。

イスラム教だけでなく、ユダヤ教キリスト教などの唯一絶対なる造物主を信仰する人々と、八百万どころか森羅万象にカミサマの存在を感じる日本人とでは、その死生観は大きく異なります。

飯山陽さんの「イスラム教の論理」(新潮新書)のおかげで、私は、日本人の死生観が独特なものであることを、客観的に知ることができました。

もちろん、独特であることは、優劣などとは関係ないことです。そもそも死生観に優劣などはありません。