「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

5%の5年間.13 死んだらどうなるのか?

「5年以内でこの世を去るのだから、その覚悟をしなくてはならない」

 その頃の私は、『何者』かになれずに死ぬことを、とても無念に思います。

 

 ─しかし、『何者』とは何か?

 

 私はそもそもの疑問を抱きます。

 

 例えば、歴史に名を遺す。

 歴史に名が遺るのであれば、

『悪名は無名にまさる』とも云うのだから、

 売名行為のような事をして『何者』かになる。

 という手段もあります。

 

 ─しかし、我が悪名は、残す者達を苦しめることになる。

 さすがに常識的に考えれば、『悪名は無名にまさる』と云うことは

 生きてその汚名を返上できる場合に限ることがわかります。

 

 また、仮に有名人になったとしても

 死んでしまう私には、あまり意味があるとも思えなくなります。

 

 例えば、好きでもない人から惚れられるとして、

 ありがたくは思うものの、それほど嬉しくはないように思います。

 自分が好きな人から好かれる

 これが一番の幸せでしょう。

 

 つまり、『何者かになる=功成り名遂げる』は、

 死んでゆく私にとって、何としても成し遂げたいことではない。

 

 私はようやくそのことに気づきます。

命が消えたらどこへゆくのか

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