レジリエンス2
がん専門の精神科医としての清水先生に出会った時
私は死ぬことばかりを考えていました。
けして、死にたいと思っていたわけではありません。
しかし、死を受け容れるしかない
と思い込もうとしていました。
私を縛りつけたのは「5年生存率5%」という数字でした。
統計上、私は5年以内に95%死ぬのです。
なんとかして、死を受け容れねばなりません。
「是非もなし」
とされる言葉を飲み込もうとしていていました。
「散りぬべし 時知りてこそ よの中の 花も花なり 人も人なり」
細川ガラシャの辞世の句を飲み込もうとしていていました。
私はわずかな残された時間を大切に使いたいと思っていました。
そのために、私は冷静にならねばなりません。
「マイナスである自分をゼロまで引き上げる」
私はその方法を必死に探っておりました。
私には残された時間が、砂時計の落ちる砂のように見えました。
そう、思えました。
「「死生学」という学問のことをご存知ですか?」
奈落の底から見上げる私に、清水先生は、そう尋ねていました。