「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

物語ゼロ

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ドラマならば、例えば治療が終わったら ハッピーエンドなり、バッドエンドなり、 物語は終わります。 しかし、生きている限り、人生は終わりません。 なにしろ「実写版」ですからね。 どんなに痛くても、 寒けがしても、 冷や汗をかいても、 眠れなくても 人…

レジリエンス12

痛みを堪えることを意味がない。 医療麻薬を使って痛くない時間を作ることは、 この4年間、ほんとうに必要なことでした。 それは今も同じです。 医療麻薬を使わなくては消えない痛みを、 私は抱えています。 医療麻薬の使用をやめるためには、時間がかかりま…

レジリエンス11

クスリと身体の相性は、おそらく個体ごとに違います。 ですから、私とクスリとの相性は私だけのものでしょう。 オキシコドンというら怪獣のような名前のクスリと四年付き合いました。 痛みを消すために飲んできたオキシコドンに、私は依存してしまっていまし…

レジリエンス10

「クスリの離脱を始めることになります」 私は清水先生に、「本日のテーマ」を告げます。 清水先生の外来を受診する時に、私はその回の話題を決めて、そのテーマに沿ってカウンセリングを受けることにしています。 もっとも、たいていは、私の話はまとまらな…

レジリエンス 9

清水先生は、こんな話かたをします。 「成長と呼ぶ人もいます」 そして 「成長と呼ぶことを、嫌う人もいます」 清水先生は、一体、どれだけの「死に直面した話」を聞かされたのでしょうか? しかも、その話はどれ一つとして同じ話はないのです。 「答えは私…

レジリエンス 8

「成長という言葉を嫌う人もいます」 清水先生が話しを続けます。 「もう、前の人生とは違う。元には戻れないのだから、成長ではない、と」 なんだか、わかる気がしました。 ほとんどの人は「死なないつもり」で生きています。 それが、死と直面してしまう。…

レジリエンス 7

レジリエンスは「元に戻る力」という定義ですかね。 マイナスからゼロに戻る力。 ならば、ゼロを突き抜けて、プラスに至った場合は、 どういえば良いのか? 「成長というのでしょうかね」 清水先生は、いつでも正解を教えてくれるわけではありません。 そも…

レジリエンス 6

純さんはとてもはにかみ屋さんの保健師さんです。 2016年10月に「人生でほんとうに大切なこと」という本が出版されました。 純さんは、その本を読むことで、私と著者の稲垣麻由美さん、そして清水研先生のことを知ったそうです。 さらに純さんは鎌倉で開催さ…

レジリエンス 5

それは偶然の再会でした。 稲垣麻由美さんの著作「人生でほんとうに大切なこと」の第1話、 ─妹へ「ありがとう」のネックレス。駆け抜けた二十一歳。 の主人公である小宮聖斗さん(仮名)のお母さんと、再会したのは 今週水曜日の清水先生の精神腫瘍科外来折…

レジリエンス 4

私はこの文章を2019年の6月現在に書いています。 つまり、 2015年6月の4年後 「5年生存率5%、死亡率95%」宣告が成立しなかった(あと1年ありますが) 時点で、当時を振り返ってこの文章を書いています。 未来のある時点から過去の軌跡を振り返って語…

レジリエンス3

「死生学」とは、死についての科学だそうです。 ネットで調べると ──「死生学」が対象とするのは、人間の消滅。死である。 とありまして。 「死ぬと人間は消滅するのか」 私は衝撃を受けました。 「死んだらどこにいくのだろうか?」 私はそんなことを考えて…

レジリエンス2

がん専門の精神科医としての清水先生に出会った時 私は死ぬことばかりを考えていました。 けして、死にたいと思っていたわけではありません。 しかし、死を受け容れるしかない と思い込もうとしていました。 私を縛りつけたのは「5年生存率5%」という数字…

レジリエンス

がん宣告は、「死なないつもり」で生きている私たちをいきなり「死」に直面させます。 しかし、現在の社会では「死」はとても縁遠い存在です。 ですから、いきなり「死」と直面した時に、人は精神的に大混乱に陥ります。 精神的なダメージは、患者本人だけで…