レジリエンス10
「クスリの離脱を始めることになります」
私は清水先生に、「本日のテーマ」を告げます。
清水先生の外来を受診する時に、私はその回の話題を決めて、そのテーマに沿ってカウンセリングを受けることにしています。
もっとも、たいていは、私の話はまとまらないのですが。
私の場合の「クスリの離脱」とは、医療麻薬の使用をやめることを意味します。
そして、それは困難を伴うことが多いらしいのです。
「消えた痛みは、何処に行くのか?などと言ってましたが、消えた痛みは、ちゃんと居ました」
がん患者の残された短い時間を、せめて痛みを和らげることで、大切に使えるように。
医療麻薬は、がん患者の痛みを消します。
その医療麻薬を私は四年もの間使用してしまいました。
「長生きできた引き換えに、消えた痛みを受け取った気がします」
私はそう言って笑います。