「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

レジリエンス10

 

「クスリの離脱を始めることになります」

 

私は清水先生に、「本日のテーマ」を告げます。

清水先生の外来を受診する時に、私はその回の話題を決めて、そのテーマに沿ってカウンセリングを受けることにしています。

 

もっとも、たいていは、私の話はまとまらないのですが。

 

私の場合の「クスリの離脱」とは、医療麻薬の使用をやめることを意味します。

そして、それは困難を伴うことが多いらしいのです。

 

「消えた痛みは、何処に行くのか?などと言ってましたが、消えた痛みは、ちゃんと居ました」

 

がん患者の残された短い時間を、せめて痛みを和らげることで、大切に使えるように。

 

医療麻薬は、がん患者の痛みを消します。

 

その医療麻薬を私は四年もの間使用してしまいました。

 

「長生きできた引き換えに、消えた痛みを受け取った気がします」

 

私はそう言って笑います。