「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

レジリエンス外来.33

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「戦地で生きる支えとなった115通の恋文」の主役は、「115通の恋文」です。

いえ「115個の物語」です。

稲垣先生はその「115個の物語」の前後や背景を丹念に綴ったのだ。

私は病室の灯りの下で、そんな感想を持ちました。

そして、この本を読むうちに、私に不思議なことが起きました。

私が泣くのです。

私が、枕を押し当てて、声を殺して泣くのです。

私は驚きました。

私にもドラマやスポーツなどで、感動して涙が出ることはあります。

しかし、「涙が出ること」と「泣くこと」は違います。

私は「恋文」を抱いて泣きました。

枕を押し当てて、声を殺して泣きました。

私は泣きながら考えました。

私は、いつから泣いていなかったのだろうか。

そういえば、父親の葬儀の時にも泣かなかった。

最後に泣いたのは、いつだろうか。

私は、いつから泣かなくなったのだろうか。

私は泣きながら、困り果てていました。

私が泣きやまないからでした。

ついに、私は看護師さんの前でも泣いてしまいます。

私には「泣く私」を、どうすることもできませんでした。

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