レジリエンス外来.33
「戦地で生きる支えとなった115通の恋文」の主役は、「115通の恋文」です。
いえ「115個の物語」です。
稲垣先生はその「115個の物語」の前後や背景を丹念に綴ったのだ。
私は病室の灯りの下で、そんな感想を持ちました。
そして、この本を読むうちに、私に不思議なことが起きました。
私が泣くのです。
私が、枕を押し当てて、声を殺して泣くのです。
私は驚きました。
私にもドラマやスポーツなどで、感動して涙が出ることはあります。
しかし、「涙が出ること」と「泣くこと」は違います。
私は「恋文」を抱いて泣きました。
枕を押し当てて、声を殺して泣きました。
私は泣きながら考えました。
私は、いつから泣いていなかったのだろうか。
そういえば、父親の葬儀の時にも泣かなかった。
最後に泣いたのは、いつだろうか。
私は、いつから泣かなくなったのだろうか。
私は泣きながら、困り果てていました。
私が泣きやまないからでした。
ついに、私は看護師さんの前でも泣いてしまいます。
私には「泣く私」を、どうすることもできませんでした。