レジリエンス外来.41
清水先生ならば「正解」を知っているはずです。
何故なら、沢山の「死に方」を観ているから。
何故なら、沢山の「死に方」を聴いているから。
しかし私の問いかけに、清水先生は答えてはくれません。
清水先生は、他の患者の話を話してはくれないのです。
何故なら、どの患者の「物語」とも、私の「物語」は、
全く違う、別の「物語」だからです。
人は、誰でも、その人だけにしか歩むことの出来ない人生を生きています。
だから、人生は比べることが出来ません。
日本で一番沢山のがん患者の話を聴いている清水先生は、私にそのことを気づかせようとしていました。
そう、人生は比べることが出来ない。
そして、
「私は死んだらどうなるのか?」
という問いかけは、
「そもそもの「私」は何か?」
と問いかけに帰着する。
そんなことに気づかせようとしていました。
そうです。
清水先生は、私を落ち着かせようとしていました。
2016年の私は、とにかく切迫していました。