「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル97

私と清水先生との対話は続きます。 「千賀さん、どんな人にも自分だけの物語があります。 かけがえのない一人ひとりの物語です」 「先生は、患者さんが思い残すことなく逝くことができれば、報われますか?」 「私たちは自分たちの達成感を診察の目的にして…

コイントレイル96

人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話 清水研先生の言葉は続きます。 「死の社会学いう視点から見ると、産業革命以降、日本では宗教を失い、 死からも遠ざかって、人間はなぜ生きるのかということを日々考えなくなった と…

コントレイル95

清水先生は、私の”希望”についての話に対して、以下のように応えています。 人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話 「例えば、私の中でも千賀さんと同じかもしれませんが、 素晴らしい業績を上げて注目されたいとか、 この…

コントレイル94

坂本竜馬については、コントレイル86でも登場しました https://resilience.hatenablog.jp/entry/2020/07/12/173115 竜馬がゆくのなかの竜馬の 「世に生を得るは事を成すためなり」 という言葉は、私だけでなく多くの人の人生の指針ではないかと思います。 何…

コントレイル93

天に意思がある。 としか、この若者の場合、おもえない。 天が、この国の歴史の混乱を収拾するためにこの若者を地上にくだし、 その使命がおわったとき惜しげもなく天に召しかえした。 この夜、京の天は雨気が満ち、星がない。 しかし、時代は旋回している。…

コントレイル92

稲垣麻由美著「人生でほんとうに大切なこと」 人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話 第三版の重版出来したとの連絡を受けました。 2017年10月に初版、2019年に第二版、そして2020年に第三版と、 ロングセラーとなりそうな…

コントレイル91

↑本文とはあまり関係ありません。 クスリの話が続きます。 医療麻薬の服用は、入院初日になります。 入院時の診断は、手術不能・化学療法(抗がん剤・放射線治療)を施す。 5年生存率5%を20%に引き上げる。 というものでした。 医療麻薬投与の判断は主治…

コントレイル90

↑写真は記事とは無関係です。(サナギから還った胡蝶の気分ではあります) プロチゾラム(商品名:レンドルミン)という睡眠導入剤の服薬が始まったのは 2015年9月からの入院当時からです。 肺がん患者ばかりの病室は、互いの咳のためになかなか眠れないので…

コントレイル89

「星の王子さま」で、 愛しむことで特別な存在を得ることや、 誰かの特別な存在になることを知りました。 私の「人生でほんとうに大切なこと」は、 ようやくたどり着いた私なりの「死生観」なのだ。 あの頃の私は、そう思っていました。 しかし、今は少し違…

コントレイル.88

「何者かになる、ということは、 多くの人にとっての「特別な存在」になる、 ということなのでしょう」 私の説明を清水先生は納得してくれたようです。 「けれども「特別な存在」になることが、 「何者かになる」ということならば、 私には、何者かになる必…

コントレイル.87

7人の名医が語る「忘れられない患者」 http://www.asmss.jp/2019/syuuasahi0301.pdf 「おや、それでは私が千賀さんを選ばなかったら、 千賀さんは「何者」にはなれなかったということですか?」 清水先生は片眉を動かして尋ねてきます。 「そうですね。選ば…

コントレイル.87

「人生でほんとうに大切なこと」の談義はまだまだ続きます。 「手段が目的になる。というのは、よくあることです」 私は清水先生に笑います 「私は人は「何者かになる為に生まれてきたのだ」と思うようになってしまいました。 ヒーロー願望のようなものだと…

コントレイル.86

清水研先生との「人生でほんとうに大切なこと」談義は、坂本竜馬に飛びます。 人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話 「そうなんです。カッコいいんです」 私も応えます。 「世に生を得るは事を成すためなり。カッコいい」…

コントレイル.86

清水先生との「人生でほんとうに大切なこと」談義はまだまだ広がります。 人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話 「人間は幸せになるために生まれてくる」 宮沢賢治の「教え」は、私の生きる指針となりました。 おかげで、…

コントレイル.85

「しかし、機嫌が良い、というのは、別に「明鏡止水の境地」というわけではありませんので、機嫌はわりと簡単に悪くなります」 清水先生がうなずきます。 「簡単に良くなったり、悪くなったりするということは、「コントロールすることもできる」ともいえま…

コントレイル.84

自分にとっての「人生でほんとうに大切なこと」を、ようやく言語化できた時のことは、よく覚えています。 それは、去年の年末のこと、一年の最後の清水先生の外来の時間でした。 「先生、私の「ほんとうに大切なこと」というのは、「私の機嫌が良い」という…

コントレイル.83

清水先生と死生観について考えている時に出会った恩田陸さんには、 その他の作品でも「お世話になる」ことになります。 まさに、「夜のピクニック」の中の一節の通りに、 「もっと早く出会っていれば…。」 とも思われますが、「ちょうど良い、出会うべき時」…

コントレイル82

「千賀さんの精神状態が落ちついた頃の様子を話していただけますか?」 病気について他人と話すことが久しぶりな上に、zoomというTV会議越しであったことからか、私は少し緊張していました。 「治療が、治験も含めた治療が全て終わった頃、酷く痛むようにな…

コントレイル81

「人は死んだらどこにいくのだろう?」 そんなことに思い巡らせていた私は、清水先生とのカウンセリングを受けながら自分の中を深く深く降りてゆくうちに、なんとなく「回答」のようなものに気づきます。 自分の存在が消えても、確実に受け継がれていくもの…

コントレイル80

痛みに耐える。 日本人の美意識としては、「さようならば」と、痛みに耐える姿こそが、美しいとされます。 昨日、私は顎の痛みで口が開きませんでした。 痛みに耐える。 ↓ 歯をくいしばる。 ↓ 眠っているうちは、歯ぎしりしてしまう。 ↓ 顎が痛くなる。 とい…

コントレイル79

消えた痛みはどこへゆくのか? 「僕たちは、この病院では、いつもは「治らない方」に医療麻薬をお出しします」 国立がん研究センター中央病院の緩和ケア担当医は、とても穏やかに話をしてくれます。 がんが不治である場合には、QOLつまり、患者や家族の「残…

コントレイル78

私は清水先生とで「人生でほんとうに大切なこと」つまり「人の本来の幸せとは何か」ということについて語り合います。 その中で「今」「今日」という言葉がキーワードになります 色は匂へど散りぬるを わが世誰ぞ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔…

コントレイル77

この世にし 楽しくあらば 来む世には 虫に鳥にも吾はなりなむ 生ける者 つひにも死ぬる者にあれば この世なる間は 楽しくをあらな (大伴旅人<万葉集>) この世が楽しければ、来世は虫や鳥でも構わない。 どうせ死ぬのであれば生きている間は楽しみたい。 …

コントレイン76

私は「わからないことは怖い」→「わかれば怖くなくなる」という仮説から、 「死」についての知識を習得することを思いつきました。 もちろん、清水先生の「死生観」という言葉がきっかけとなったことは間違いありません。 しかし、世界には、私たち日本人と…

コントレイル75

日本人には固有の死生観がある。 「死について、知らないから怖い」…。のであれば日本人の固有の死生観を知識として知ることで、宗教や信仰に頼ることなく、知性的に死を怖がらなくなるのではないか。 私は自分が立てた、上記のような「仮説」に対して、その…

コントレイル74

この痛みの原因は、転移ではないことから、放射線治療や抗がん剤治療によって寸断された神経や侵された神経が痛むのであろう、ということになりました。 その結果が分かるまでは半年程度かかりました。 ちなみに、その痛みは、5年後の2020年6月現在まで続い…

コントレイル73

「わからないことは、怖い」 このことは、全てのことに通じるかも知れません。 現在、世界に蔓延する「コロナ禍」も、相手が「未知のウイルス」という「わからない」 ことが、人々の恐怖を増幅しているようにも思えます。 当時の私が「わからない」ことは、…

コントレイル72

ここで、当時の私に対する清水先生のアプローチを振り返ってみます。 人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話 の中で、著者の稲垣麻由美さんが「第七話 がんになったおかげで生れ変わることができた」 では、私が精神腫瘍科…

コントレイル71

「死生観」という清水先生の言葉から私が思い浮かべたのは、能・謡曲のことです。 この事は、「人生でほんとうに大切なこと」稲垣麻由美著にも記されています。 人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話 親友に能楽師である…

コントレイル70

━100万年も しなない ねこ が いました。 100万回も しんで 100万回も 生きたのです。 という文で「100万回生きたねこ」は始まります。 ねこが死んだ時、ねこを可愛がっていた100万人の人たちは泣きましたが、 ねこは1回も泣きませんでした。 ねこは様々な人…