「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

コントレイル 飛行機雲

コントレイル72

ここで、当時の私に対する清水先生のアプローチを振り返ってみます。 人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話 の中で、著者の稲垣麻由美さんが「第七話 がんになったおかげで生れ変わることができた」 では、私が精神腫瘍科…

コントレイル71

「死生観」という清水先生の言葉から私が思い浮かべたのは、能・謡曲のことです。 この事は、「人生でほんとうに大切なこと」稲垣麻由美著にも記されています。 人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話 親友に能楽師である…

コントレイル70

━100万年も しなない ねこ が いました。 100万回も しんで 100万回も 生きたのです。 という文で「100万回生きたねこ」は始まります。 ねこが死んだ時、ねこを可愛がっていた100万人の人たちは泣きましたが、 ねこは1回も泣きませんでした。 ねこは様々な人…

コントレイル69

竹内整一氏は、佐野洋子さんの「100万回生きたねこ」も、この著書の中で紹介しています。 かつて、我が家の本棚にあったこの絵本は、子どもたちの成長と何度かの引越しのために無くなっていました。 我が家の全員が読んでいた絵本ですが、私だけはその内容を…

コントレイル68

世界には、様々な別れの言葉がある中で、「さようなら」という別れの言葉は、 これまで生きてきた「生」を 「さようなら(さようであるならば)」と、立ち止まり確認し終えて、 これからの「死」を死んでいく。 という、日本人の特有な「死生観」を示してい…

コントレイル67

清水研先生と「日本人の死生観」を語る時、私はたまたま入院する時に手にしたこの本について話しました。 別れの言葉は、3つのタイプに分類されるようです。 ⑴神があなたと共に(Good-bye.Adieu,Adios) ⑵再会の約束(See you again,再見) ⑶お元気で(Farewe…

コントレイル66

あめゆじゆ とてちて けんじや けんじ兄ちゃん みぞれをとってきてちょうだい 宮沢賢治の「永訣の朝」の一節です。 宮沢賢治の妹(とし子)が死の床にいる。 けれども、賢治には妹に何もしてあげられない。 そんな賢治に、妹は「みぞれをとってきて」と頼み…

コントレイル65

┿痛みを薬でコントロールすることへの抵抗感 稲垣麻由美さんの著作「人生でほんとうに大切なこと」(KADOKAWA)の第七章に、鎮痛剤についての記述があります。 この中に、 「薬で消えた痛みは、どこに行くのか」 という私と清水先生との問答があります。 痛…

コントレイル64

がん宣告に伴って「五年生存率」というものを伝えられる場合があります。 「五年生存率」は、腫瘍の位置や転移の場所などで過去のデータから算出される、いわゆる統計値です。 この統計値に、がん患者が苦痛を覚えることは本当にたくさんあります。 例えば …

コントレイル63

清水研さんの朝日新聞での連載が始まりました。 世界的なコロナ禍とは、 死を遠ざけてきた現代人に対して、 死なないつもりで生きている現代人に対して あらためて「死の存在」を意識させるものなのかもしれません。 そんな中、「心に蓋をしない」と説く清水…

コントレイル62

「人生でほんとうに大切なこと」 この本は、文筆家の稲垣麻由美さんが 「医師でもなく、患者でもない」 という立場で、 「物語」➕「コラム」というフォーマットを用いて、 「がん専門の精神科医」である精神腫瘍医 という存在を紹介する 作品を上梓してくれ…

コントレイル.61

清水研先生から、国立がん研究センター中央病院を辞されことを、2019年の年末に知らされました。 「清水先生は私の命の恩人です」 清水先生と出会う前の私は、 死を受け入れることばかり考えていました。 来年の事業計画。 定年後の暮らし。 東京2020 それら…

コントレイル.60

当然のことですが、私は一人の肺がん患者でしかなく、 がん患者を代表する者などではありません。 また、患者会などにも属してはいないので、 私が知るがんの情報は乏しいものでしかありません。 しかし、清水研さんは、 日本の臨床精神腫瘍学を代表する医師…

コントレイル.59

「花とは、咲くによりて面白く、散るによりてめづらしき也」 能楽を大成した世阿弥の言葉です。 花が咲くことと散ることを一対に語っています。 この言葉は、「世阿弥の美学」をあらわしている。 そう、伝えられています。 しかし、私は思うのです。 この言…

コントレイル.58

「日本を取り囲むさまざまな民族でも、 死ねば途方もなく遠い遠い処へ旅立ってしまうと いう思想が、おおよそはいきわたって居る。 独りそういう中に於いてこの島々にのみ、 死んでも死んでも同じ国土を離れず、 しかも故郷の山の高みから、 永く子孫の生業…

コントレイル.57

私は自分自身が「がん宣告」を受けて、精神的に適応できなくなった経験から、 「がん専門の精神科医」ともいえる「精神腫瘍医」の存在を多くの人に伝えたいと思いました。 一般の精神科医ではなく、 がんという病気、その治療と治療によって起こる心身の変化…

コントレイル.56

「人間は、一日一日をよく生きながら、しかも同時に、 つねに死に処する心構えの用意を続けなければならない。 私は、生命をよく生きるという立場から、 死は、生命に対する「別れのとき」と考えるようになった。 立派に最後の別れができるように、平生から…

コントレイル.54

人は死んだらどこに行くのだろう? 病気になった私は、死を受け容れることで苦しみました。 そんな私は、清水先生に出会って、それまでとは異なる世界へと展開することになりました。 清水先生から、「死生学」というキーワードを教えていただいたことで、私…

コントレイル.53

少し先を急ぎ過ぎたようです。 実は「人生でほんとうに大切なこと」で精神腫瘍科を知ったものの、タイミングが悪くなかなか受診の機会に恵まれない方からも、「お能の死生観」に興味あるとのメッセージをいただいたもので、先走りました。 「わからないこと…

コントレイル.52

日本の独特な哲学・美学ともいえるものに「武士道」があります。 ところで、能楽、猿楽がこの武士道を形成する上で欠かせないものであったことは、あまり知られていません。 武士道は、武装農民であった者たちが、武士となるなかで培われた哲学です。 しかし…

コントレイル.51

私だけでなく、がんを告知された者は、死を恐怖します。 医学の進歩で「治る病気」になったとはいえ、がんという病気への恐怖心は簡単には払拭できないでしょう。 人は死の恐怖心と、どう対処すれば良いのか? 他の人は、どう対処したのか? 私は沢山の事例…

コントレイル.50

さて、私が「能の死生観」と書き続けてきたこと。 それは、「生と死は対立するものではなく、一対のもの」 という、日本人が古来から持つ、独特の死生観のことです。 ちなみにここでの「日本人」とは、いわゆる人種のことではなく、この島国で生まれ育った人…

コントレイル.49

みひろさんは、実際に「生と死の境目」まで行きました方です。 そんなみひろさんは、清水先生の患者となり、 「人生でほんとうに大切なこと」を読むことで、 精神腫瘍科の存在がほんとうに大切なことに、気づいたとのことです。 そして、そんなみひろさんは…

コントレイル.48

私と同じく清水先生の外来患者である「みひろさん」は、 「人生でほんとうに大切なこと」を通じて、私と知り合いました。 みひろさんが本のPOPを作って清水先生に見せてくれたことがきっかけで、みひろさんが私にメッセージをくれました。そして同じ日に清水…

コントレイル.47

「清水先生への依存」 などという表現をしてしまいましたが、 考えてみれば、私には 「あなた無しでは生きていけない」 という人が何人もいます。 「あなた無しでは生きていけない」 という思いは 「だからあなたは、いつまでも健やかで幸せでいてください」…

コントレイル.46

依存していても、依存してなくても、実害が無いのならば どちらでも良いのかも知れません。 しかし、仮に清水先生に依存していたとしても、依存することで私が心の平穏を得られるのならば、貸借対照表としては、プラスと言えるのかもか知れません。 そもそも…

コントレイル.45

スーパードクター清水先生の患者になって、もう三年になります。 「精神的な安定を確認する為に、月に一回、緩和ケアに通院するついでに清水先生の外来を受診してカウンセリングを受ける」 ということを三年間続けてきました。 清水先生のおかげで、私は精神…

コントレイル.44

稲垣さんは清水研先生をスーパードクター風に描きませんでした。 けれども、清水研先生がスーパードクターであることは、清水先生と対面した人ならば感じとることができることでしょう。 「この人ならば、話すことができる」 「この人ならば、聴き取ってくれ…

コントレイル.43

私が稲垣麻由美さんが、精神腫瘍学に携わってくれたことを「幸運」と断言するのは、 私は稲垣さんの「学歴」を知らずに「精神腫瘍科の話を書籍にしたい」と相談したからなのです。 そうなんです。 臨床心理士を目指して、系統的に心理学などを学んだ人だから…

コントレイル.42

精神腫瘍医の存在を、たくさんの人に知ってもらいたい。 そのためには、清水研という精神腫瘍医をアイコンとして、スーパードクターとしてしまえば良いのでしょうか? スーパードクター清水研が、死の恐怖に怯える患者の苦悩を快刀乱麻を断つが如く解決する…