「人生でほんとうに大切なこと」 精神腫瘍医との対話

「5年生存率5%」のがん患者が、がん専門の精神科医と共に歩んで来た「絶望の淵から希望の星まで」の道程

2019-01-01から1年間の記事一覧

レジリエンス外来.58

「ところで金井さんは何と言ってましたか?」 大澤団長の質問に、私は答えていませんでした。 金井雄資さんとは大学の入学式の時に知り合いました。 「スターというのは、こういう人のことをいうのだな」 私は金井さんのおかげで「本物のスター」を知ること…

レジリエンス外来.57

2019年10月17日。食道の腫瘍の細胞検査の結果。 「悪性の所見無し」 とのことです。ご心配をおかけしました。 細胞検査の結果がこんなにあっさり出ることもあるのだと、感心しました。今後の対応については、がんセンターの主治医と相談することになります。…

レジリエンス外来.56

「千賀さんが、シンデレラか白雪姫か、という問題ですが」 と、応援団長こと大澤さんが雑なまとめ方をします。 この大澤さんは、まさに「応援の名人」なのです。例えば 「私が事務局をやりますから、最年長組長さんが会長をやってください。千賀さんの奥さん…

レジリエンス外来.55

「でも、それじゃ「白雪姫と七人の小人」じゃないですか?」 いよいよ出版が決まりました。 稲垣先生は編集の清水能子さんに「何度も書き直しを命じられながら」の執筆中です。 応援団は、「販売戦略会議」と称する飲み会です。 「主役は千賀さんでしょ? 落…

レジリエンス外来.54

ああ、まだまだ、「人生でほんとうに大切なこと」が 「出版がされる前」の世界から、現在に話を飛ばしてしまいました。 2016年に話を戻します。 当時の「能楽の死生観と精神腫瘍学を紹介するような書籍」というコンセプトの本は、それ以前に、 「がんの本は…

レジリエンス外来.53

それは、私が通医する国立がん研究センター中央病院の2階A外来の待合で起きた小さな「事件」でした。 治験の点滴を受ける前の診察を、私は待合で待っていました。 いきなり、怒声が響きました。 読んでいた本から顔を上げると、お婆さんが杖を上手く使えず…

レジリエンス外来.52

清水先生の往診室。 私が扉を開けて部屋に入ってゆく様は、「人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話」に描かれているとおりです。 しかし、その逆はどんな風に見えるのでしょうか? 扉が開くたびに、まったく違う、切迫し…

レジリエンス外来.51

38℃を越える高熱を、短期間のうちに何日も発熱してしまい、正直、戸惑っています。 これが「痛み」ならばオキノームを連続服用して震えて我慢することができます。 ところが、「高熱」と「関節痛」となると、ふらついてしまい、立ち上がること、歩くことがで…

レジリエンス外来.50

稲垣先生の「ハッピーエンド」で、 私は再度、金井雄資師から教わった「夢幻能」を思いました。 この世に未練や無念を残した者たち。 彼らは英雄の場合もありますが、敗北者であったり、無名な人だったりします。 彼らの多くは死者です。 そんな彼らが「ワキ…

レジリエンス外来.49

清水先生が沢山のがん患者の物語を聴いたように、 稲垣先生も、沢山の成功者といわれる人たちの物語を聴いてきました。 稲垣先生は、「ハッピーエンド」というキーワードが、私を動かすであろうことを知っていたのかも知れません。 とにかく、私は稲垣さんに…

レジリエンス外来.48

「千賀さん、みんなはハッピーエンドが好きなんです。私は千賀さんの希望に満ちた物語が書きたいです」 ハッピーエンド! 文筆家稲垣先生も言葉に、私は呆然としました。 しかし、稲垣さんの「みんなはハッピーエンドが好き」という言葉は本当なことだと思い…

レジリエンス.47

「何故、生きようとしないのか?」 稲垣先生の質問に、私が咄嗟に応えられなかったのは、 やはり 「エネルギーの無駄」 という思いがあったからです。 無駄な努力。 叶わぬ願い。 それを追い求めること。 そんな姿は、見苦しい。 そんな姿は、周囲にいる者を…

レジリエンス外来.46

「死を覚悟する。受け容れる」 ということと、 「生きることをあきらめる」 ということは、きっと違います。 おそらく当時の私は、生きることをあきらめていました。 けれども、他人からは、冷静に死を受け容れたように見せかけようとしていたのだと思います…

レジリエンス外来.45

私の視線を180度巡らす。 絶望から希望への180度。 俯いていた私が、天を見上げるようになったのことは、 清水先生との「セッション」の成果です。 しかし、それだけではありません。 親友の能役者金井雄資から学んだ、 「能楽は鎮魂歌であるからこそ、生命…

レジリエンス外来.44

清水先生の外来受診は、前回の受診してからの心象の風景を私が語ることが多かったです。 そもそも、レジリエンス外来を卒業して、既に精神的には安定を取り戻した私が、清水先生の外来を受診するのには二つの理由があります。 まず、私の精神が安定している…

レジリエンス外来.43

今日は午後休をとり、清水先生の外来を受診しました。 食道の腫瘍についての報告です。 いつもの部屋で清水先生と向かい合うと、ふと、背後に稲垣さんが居るような気分になることがあります。 3年前のレジリエンス外来は、私にとって、とても特別なものにな…

レジリエンス外来.42

あの混乱の日々から3年が過ぎました。 5年生存も、達成まであと1年です。 レジリエンス外来のおかげで、 私は今を生きることを続けることで、 未来に生きることを知りました。 そんな私の食道に、腫瘍が見つかりました。 人間ドックの胃カメラで目視できた…

レジリエンス外来.41

清水先生ならば「正解」を知っているはずです。 何故なら、沢山の「死に方」を観ているから。 何故なら、沢山の「死に方」を聴いているから。 しかし 私の問いかけに、清水先生は答えてはくれません。 清水先生は、他の患者の話を話してはくれないのです。 …

レジリエンス外来.40

「人は死んだら、何処に行くのだろう」 「死んだら、この痛みはどうなるのだろう」 私がそんなことを考えるようになったのには、 「医療麻薬」と関係があるのかも知れません。 発現以来、2カ月近く苦しめられた痛み。 私は、医療麻薬のおかげで、その痛みが…

レジリエンス外来.39

私と清水先生との出会いは、稲垣麻由美さんの 「人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの会話」で詳しく再現されています。 当時の私にとっては 「どうすれば死を受け入れることができるのか?」 ということは問題ではありません…

レジリエンス外来.38

レジリエンス外来のワーク2で振り返ってきて、 私はようやく清水研先生との出会いまで立ち帰ることができました。 当時の私は、後に清水先生が表すところの 「騎手」が「馬」を制御できない状況でした。 「頭」で「泣いてはいけない」と思っても、 「身体」…

レジリエンス外来. 37

がん宣告を受けてからのがん治療は、いわゆる標準治療と言われる治療になります。 それ以上の治療を、私は望みません。 エネルギー保存の法則、というものがあります。 私は、その人が持つエネルギーには絶対量が決まっていると思っています。 だから私のエ…

レジリエンス外来.36

文筆家である稲垣麻由美さんは、私の受診時のみならず、清水研先生からさまざまなことを取材しました。 その結果は、「人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話」という著作となるのですが、それはまた別の話。 レジリエンス…

レジリエンス外来.35

「千賀さん、奥さまやお子さんに言えないような泣き事でも、私には伝えてくださいね」 稲垣先生から、そんなメールをいただきました。 だから、稲垣さんの前で泣くことに、あまり抵抗はありませんでした。いや、抵抗感があったとしても、泣くことは止められ…

レジリエンス外来.34

泣いてしまう私を、私はとめることができません。 ただでさえ私の身体は治らない病気を抱えています。 身体だけでなく、心までポンコツになってしまった。 私は私自身に絶望しました。 さらに、私を激しい痛みが襲います。 その痛みを忘れるには、医療麻薬を…

レジリエンス外来.34

泣いてしまう私を、私はとめることができません。 ただでさえ私の身体は治らない病気を抱えています。 身体だけでなく、心までポンコツになってしまった。 私は私自身に絶望しました。 さらに、私を激しい痛みが襲います。 その痛みを忘れるには、医療麻薬を…

レジリエンス外来.33

「戦地で生きる支えとなった115通の恋文」の主役は、「115通の恋文」です。 いえ「115個の物語」です。 稲垣先生はその「115個の物語」の前後や背景を丹念に綴ったのだ。 私は病室の灯りの下で、そんな感想を持ちました。 そして、この本を読むうちに、私に…

読売新聞記事 レジリエンス

2019年(令和元年)8月31日(土曜日)夕刊読売新聞 がん患者「レジリエンス」外来 という山田聡記者の記事が掲載されました。 「大きなショックを受けたがん患者の心のケアとして、自ら立ち直る力「レジリエンス」を引き出す方法が注目を集める、と、国立が…

レジリエンス外来.32

「戦地で生きる支えとなった 115通の恋文」 この本で描かれる「戦地」とは、 夫が戦う文字通りの「戦地」と、妻が一人で娘を育てる「戦地」の、二つの場所を示しています。 その二つの「戦場」を妻が夫に送る「恋文」が結びます。 「この本は「戦争の本」で…

レジリエンス外来.31

私は「レジリエンス外来」のワーク2の問い2 「がんの宣告後の心の動き」を思い出しています。 来週の検査を申し込む→一週間後検査を受ける→一週間後に検査の結果を聞くと駄目。だから来週の検査を申し込む→一週間後の検査を受ける→一週間後に検査の結果を聞…